研究概要
水素エネルギー材料研究室でやっていること― Our activities ―
地球温暖化を初めとする様々な環境問題は、人類の人為的な経済活動に起因すると言われています。例えば、地球温暖化に関しては、化石燃料の大量消費によるCO2などの温室効果ガスの人為的排出が主要因であると考えられています。化石燃料は太古の時代の植物の死骸が長時間かけて変成することにより形成されたと考えられており、消費にかかる時間に比べて再生に要する時間が極めて長いため、資源の枯渇と廃棄物(CO2など)の蓄積という形で問題を生じていると考えることができます。
こちらのリンクから水素エネルギー材料研究室で取り組んでいる研究の一部を動画で紹介しています。
・次世代エネルギーサイクル”水素”を回せ!https://www.sensei-ch.rd.kansai-u.ac.jp/movies/281/
・再エネ利活用を目指した長期水素貯蔵可能なMg基水素貯蔵材料https://www.sensei-ch.rd.kansai-u.ac.jp/movies/281/
・新技術説明会22年3月10日
水素は宇宙では最も多量に存在する物質ですが、地球上では天然の資源としては存在していません。しかし、水や天然ガスを分解して容易に得ることができ、必要に応じて熱エネルギー、機械エネルギー、電力エネルギーに変換することができます。したがって、例えば、水素の酸素との反応を利用して上記のエネルギーを得、廃棄物の水を太陽光や地熱などの再生可能エネルギーにより水素へ再生するという循環サイクルを作り上げることができます。また、廃棄物となる水の環境への負荷は小さいと考えられています。以上のことから、水素を媒体として再生可能エネルギーを人類の経済活動に必要な各種のエネルギーに変換する「水素エネルギー」システムは環境にやさしく、また化石燃料が枯渇した後でも成り立つエネルギーシステムとして注目されています。
水素エネルギー材料研究室では、現在、水素を多量に吸収し、必要に応じて放出することのできる「水素貯蔵材料」について主として研究しています。水素は通常沸点が約20Kと非常に低く、常温・常圧では希薄な気体として存在するため、コンパクト・軽量かつ安全に貯蔵することが容易ではないためです。水素貯蔵材料には様々な種類のものがありますが、例えば遷移金属を主成分とする金属・合金は水素吸蔵合金とも言われ、"eneloop"などの商品名で知られるニッケル―水素(Ni-MH)電池の負極の活物質として用いられています。水素エネルギー材料研究室では、
- 1)水素を燃料として発電し、モーターで走行する新しい電気自動車、すなわち「燃料電池自動車」用の水素貯蔵タンクに適用可能な、軽量で水素貯蔵密度の高い新規水素貯蔵材料の研究開発
- 2)水素貯蔵材料へ強加工を加えることにより、水素吸蔵・放出特性にどのような変化が現れるか、そして、なぜそのような変化をするのかメカニズムを明らかにしていく研究
- 3)水素貯蔵材料の水素との反応性を高める「活性化」に関する研究
- 4)水素貯蔵材料の熱力学的・速度論的特性の改善とその評価に関する研究
等の研究を実施することにより、水素エネルギーシステムを中核とする「水素エネルギー社会」への貢献と水素貯蔵材料に関わる学問分野への貢献を目指しています。